読書メモ 〈いのち〉とがん 患者となって考えたこと (岩波新書)
著者: 坂井 律子
出版社: 岩波書店
発売日: 2019/2/20
要約
NHKでテレビディレクターとして仕事をされていた坂井律子さんが2016年からの膵臓がんの闘病生活を通した個人の経験と知見を綴ったもの。作者は2018年に亡くなられている。
感想
膵臓がんは怖い。
というより、やはりがんという病気は怖い。
これがこの本を読み終わった後の素直な気持ちである。
そして次に来るのが、著者への尊敬と感謝。
約2年にわたる闘病生活を具体的でかつ、読みやすい文章で書き起こしてくれた著者の非凡さには目を見張る。
優れた制吐剤の開発のおかげで、私は一度も嘔吐していない。これには感謝するしかない。しかし軽い吐き気、便秘、下痢、腹痛が連続して波のように押し寄せ、全体として倦怠感がある約一〇日間は、食欲も意欲も低下する。最後の約四日間で普通の自分を取り戻し、なんとか動きが回復する。
抗がん剤投与中、普通の体調を保つことができる限られた貴重な時間をこの本の執筆に当てられたことに対して、頭が上がらない。
今では、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は下記だそうだ。1
- 男性65.0%(2人に1人)
- 女性50.2%(2人に1人)
殆どの人が患う病であるし、いずれ自分や家族が患うかもしれない。
だからこそ、この本は多くの人に読んでもらいたいし、がんのみならず、健康や死について考えるきっかけになると思う。
それだけお薦めしたいと思える本だった。